絵日記ログ・ルレン紹介1
 だてでんルレンは14才。女の子。魔王都の、豪商の生まれ。フルネームは、ルレン=クワント。
 ルレンのお父さんは、サウスシルバーという種族で、銀髪に水色の瞳の紳士です。サウスシルバーは主に魔王都と内海を挟んで対岸の大陸に住んでるんですが、商人が多く、行商→行った先で定住って感じで、魔界中に散らばっています。ルレンのお父さんもそんな感じで、魔王都にやってきて、1代で魔王都有数の貿易会社を築きました。
 ルレンのお父さんは、魔王都に着いたばかりの頃から、ずっと懇意にしていた女性がいました。その女性は、イーストレイブンという種族で、黒髪黒目でした。女性は魔王都の繁華街の、お酒の出るお店でお客さんの接客をする仕事をしていました。ルレンのお父さんは、その女性のお店に通って、仕事の愚痴をこぼしては励まされ、みたいな感じで仲良くなって、その内つきあうようになりました。ルレンのお父さんは、その女性に、会社が大きくなったら結婚して欲しい、迎えに行くから待っててと言い、その女性もうんと言いました。
 なのですが、ルレンのお父さんは、いざ会社が大きくなってしまうと、仕事が忙しくてなかなか女性と会う時間がなくなってしまいました。女性の方も、ルレンのお父さんが忙しいのを知っているし、自分とは住む世界の違う人だったのだと考え、きっともうこの先、自分と彼が結ばれることとはないだろうと、あきらめることにしました。
 だけど女性のお腹の中には赤ちゃんがいたのです。女性は赤ちゃんがいることを、ルレンのお父さんには言いませんでした。自分一人で育てようと思ったのです。そうして生まれたのがルレンです。
 ルレンのお父さんは、会社が大きくなって、毎日忙しくしていましたが、ある日、お見合いの話が舞い込みます。相手は魔王都の商家の娘さんで、彼女と結婚することは、ルレンのお父さんの商売にとって非常に有用なコネを築くことにもなりました。ルレンのお父さんは、懇意にしていたお店の女性のことを思い出しましたが、商売の方が大事だと思ってお見合いすることにしました。
 しかし。ルレンのお父さんは商売のためにお見合いを決断しましたが、お見合いに行って娘さんに会ったら、一目で恋に落ちてしまったのです。その娘さんはノースカーディナルという種族で、赤い髪に緑色の目をしていました。娘さんは、深窓の令嬢という感じで、清楚で物静かな人でした。あまりしゃべらず表情も豊かではありません。でもルレンのお父さんはその楚々とした雰囲気にぞっこんになってしましました。
 話はとんとん拍子で進み、ルレンのお父さんとその娘さんは結婚しました。ルレンのお父さんは娘さんをとても大切にし、一生懸命話しかけ、贈り物をし、精一杯尽くしました。しかし娘さんの方は、ルレンのお父さんに心を開いたわけではありませんでした。
 娘さんは、金持ちの箱入り娘で、やりたいこともやれず、ただただ静かにしていることを強要されて育ってきました。その所為で、学習性無力感にとらわれていたのです。周りから働きかけられても、なんにも感じない、そんな大人になってしまっていたのです。だから娘さんは、ルレンのお父さんがどんなに一生懸命尽くしてくれても、何も感じず、どうしてこの人がこんな風に色々するのか分からない、という風に思っていました。
 それでもルレンのお父さんはめげずに夫婦として過ごしていました。しかし数年経っても、二人の間には子どもが生まれませんでした。ルレンのお父さんには、もし子どもが生まれたら、無反応な妻も少し変わるのではないかという淡い期待もあったのですが、それも叶いませんでした。
 ルレンのお父さんは、その内、二人の間に子どもがないことがプレッシャーとなってきました。せっかく築いたこの会社を、他人に継がせるのはなんかなーとも思っていましたルレンのお父さんは跡継ぎとしての子どもが欲しい、子どもが会社を継いでくれなかったとしても、跡継ぎになりそうな有能な人物と結婚させることが出来れば……と思うようになりました。
 さて、ルレンちゃんはお母さんの元に生まれ、女手一つで育てられていました。ルレンちゃんはお母さんにめいいっぱいかわいがられ、大事にされ、愛されていました。例えお父さんがいなくても、母子は幸せだったのです。しかしルレンちゃんが物心つく前に、お父さんがルレンちゃんの存在に気付いてしまうのです。
 お父さんは風の噂で以前つきあっていた女性がひとりで子育てをしていると聞きます。お父さんは、女性のところへ会いに行き、この子は自分の子どもかとたずねます。ルレンちゃんのお母さんは、この子は確かにあなたの子だと言います。あなたが結婚したことは知ってるし、あなたの子であると口外するつもりもない、母子でひっそり暮らすつもりなので迷惑はかけない、と言います。
 お父さんは一旦は帰りますが、なんとかルレンちゃんを手元に置けないかと考えました。お父さんは再び母子の元へ訪れ、ルレンが自分の子なら自分が引き取って養育してもいいはずだ、むしろこんな貧乏生活よりも自分と一緒に暮らした方が子どものためだ、と言います。お母さんはルレンを手放したくないと思いますが、確かに自分のところはあまり養育環境がよくないとも考えました。夜の酒場で仕事をしている貧乏な自分よりは、豪商のお父さんの元の方がこの子のためかも知れない、と思ったのです。
 お母さんは泣く泣くルレンちゃんをお父さんに預けることにしました。お父さんはルレンを必ず立派に育てるからと、お母さんに約束します。

 ルレンちゃんがお父さんの元へ引き取られたとき、ルレンちゃんはまだまだ小さい子どもでした。3才か、4才くらいかな……。
 なんか呼びにくいので、これからはルレンちゃんのお母さんを実母、お父さんの妻を義母と呼びますね。

 ルレンの義母は、ルレンが家にやってきても、何も感じませんでした。お父さんは妻が他人の子にどう反応するのかハラハラしていたのですが、いつも通りの無反応に、安心すると同時に、こんなもんか、と思って少し悲しくなりました。
 お父さんは妻にルレンの養育を頼んだのですが、妻は世間知らずで、子どもにどう対処していいか全く分からず、ほったらかしにしました。お父さんはコレじゃまずいと思い、教育係の家政婦さんを雇って、ルレンにつけました。
 さて、ルレンはすくすく大きくなります。ルレンはお父さんの家へ引き取られたとき、あまりに幼かったので、実母のことを忘れてしまっていました。ただなんとなく「お母さんに愛されていた」という感覚だけが残っていました。しかし、実際のお母さん(義母)は、ルレンに全く興味がなく、ルレンがあれこれ話しかけても「そう」というだけです。
 ルレンは色んなことに挑戦します。色んなことをやって、出来るようになれば、いつかお母さんが自分を認めてくれるのではないか、遠い昔感じた愛を取り戻せるのではないか、と思ったのです。そうしてルレンは人一倍努力家になりました。学校に通うようになってからは、いつも学年で一番だったし、飛び級もしました。(飛び級して、13才で高校相当の過程を修了します) 家政婦さんたちから家事を習って、やってみたり、自分で作ったものをお母さんにプレゼントしたりしてみます。しかし義母は無反応です。ルレンのことなどこれっぽっちも気にとめてくれません。
 健気なルレンはそれでもあきらめずに、お母さんに認めてもらいたい、自分のことを見て欲しいと一生懸命します。昔、自分のことを愛してくれた母なのだから、きっといつか、母との関係を取り戻せると信じていたのです。でもやがて、賢いルレンは、自分がこの母の実の子ではないと気付いてしまいます。
 ルレンの義母は、ノースカーディナル、赤い髪に緑の瞳を持っています。父はサウスシルバーで、銀髪に水色の瞳。この両親から、黒髪黒目の自分が生まれるわけないと、ルレンは気付きます。血液型も、合いません。(資料探したけど見つからなかったorz ルレンちゃんA型なので、多分だけど、お父さんがOで、義母がBとかなんだと思う) 父と自分には似た所があるけれど、母と自分は全然似ていないとルレンは気付くのです。
 ルレンは父を問い詰めました。父は、聡明なルレンに黙っておくことは出来ないと、白状します。ルレンの実の母は、この家にいる母ではないのだと。
 ルレンは真実を告げられ、予想していたこととはいえ、ショックを受けます。ルレンはそれまで、遠い昔に自分は確かに母に愛されていたという記憶だけを頼りに、一生懸命母に働きかけながら、生きてきました。でも、信じていた母は、本当の母ではなかったのです。ルレンは、母に愛された記憶も、今の母ではなく、昔養育してくれた実の母との記憶だったのだ、と気付きます。今まで信じていたものががらがらと崩れ去り、ルレンは失意のずんどこに陥ります。
 やがてルレンは実の母に会いたいと思うようになりました。ルレンは父親から実母の居場所を聞き出し、ひとりで会いに行きます。実母は突然のルレンの訪問に驚きましたが、愛する娘が会いに来てくれたことをとても喜びました。実母は泣いて喜び、ルレンを抱きしめました。ルレンは、実母に抱きしめられ、頭を撫でられて、あなたに会いたかった会えてよかったと言われ、ああ、これが、これこそが、自分の求めていたものだった、と思うのです。遠い昔に味わった愛情は、この人のものだったのだと知るのです。
 ルレンは泣きました。どんなに時間を隔てても、変わらずにルレンを愛してくれている母の胸で、ルレンはたくさん泣きました。ルレンは実母に、色んなことに挑戦し、一生懸命頑張ってきたことを話しました。実母はそのどれもに、すごい、と感心してくれました。ルレンは立派で優秀な子なんだと喜んでくれました。
 ルレンは、この実母と一緒に暮らせたら……、と思いました。しかし実母は、ルレンの頭を撫でながら、一緒に暮らすことは出来ない、と言います。ルレンのことが大好きだし、出来ることなら一緒に暮らしたいけれど、それは無理だと言うのです。ルレンがこんなに立派になったのも、お父さんが教育係をつけてくれたり、学校に通わせてくれたからで、自分ではこんな風にルレンを育てることは出来なかっただろう、と言うのです。実母は、ルレンの父がルレンをちゃんと育てると約束してくれたから、ルレンを父に預けたのだから、今更ルレンを引き取ることは出来ないと言います。それに、義母に悪いだろうし、と言います。
 ルレンはそういわれて、ハッと義母のことを思い出します。いつも窓辺から、ぼんやり外を見ているだけの母。楽しそうにしている姿も、嬉しそうな顔も、一度も見たことがありません。ルレンは、今では血がつながっていないと分かってしまっても、自分は義母に認めて欲しくて、ずっと一生懸命やってきたことは、消えないのだ、と思いました。ルレンは急に義母のことが恋しくなりました。あの人を捨てることは出来ないと思ったのです。
 ルレンは実母に、一緒に暮らすことが出来なくても、あなたは私の母だ、私はまだ子どもで出来ることは少ないけれど、あなたを母として大切にしたい、と言います。実母はルレンの言葉を喜びました。
 ルレンは定期的に実母のところへ顔を出し、誕生日や記念日には贈り物をしました。それと同時に、義母のことも、出来る限り大切にしました。義母に話しかけるのをやめなかったし、義母に喜んで欲しいと、色々しました。義母は相変わらず無反応でしたが、ルレンはそれでも構わないと思うようになりました。義母は元々こういう人なのだな、と思うようになりました。
 こうしてルレンちゃんにそれなりに幸せな時間が訪れたのです。

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