絵日記ログ・クレア紹介1
 クレアとアヤメのことを書かなきゃどうにも説明がつかないことに気付いた。クレアの身の上話は長いですがご覚悟を……!

 クレア=ファントムは、実はファーストと同じような、創成魔道で造られた存在なのです。クレアを造り出したマスターは、クレア=ブラックウェルという名です。ブラックウェルの方を昔からの慣習で、便宜上生クレアと呼びます。
 生クレアは、魔界の西方にある小さな村に生まれました。生まれつき身体が弱く、病気がちな子でした。身体の弱さに反比例するかのように、魔道の才能はずば抜けていました。普通、西方の地に住まう種族、ウェストブロンドにはそれほど魔力の高い者は生まれないのですが、生クレアだけは古い5種族にも劣らない魔力を生まれつき秘めていました。
 西方では魔道士が少なく、生クレアは魔道の教育を受けることが出来ませんでした。生クレアはなんとなく身体を動かすことの延長のように、魔道を使えるようになります。幸いなことに、生クレアは高い魔力を爆発させたりすることはなく、しなやかに使いこなすようになります。
 身体の弱い生クレアは、部屋の外へ出たことがほとんどありませんでした。妹のクリスと、幼なじみのエリオットだけが、生クレアの友達でした。クリスとエリオットはいつも外の様子を生クレアに話して聞かせてくれました。生クレアは優しい2人のことが大好きでした。幼い3人は仲良しでした。そして成長するにつれ、生クレアはエリオットに、エリオットは生クレアに、クリスはエリオットに恋心を抱くようになります。
 生クレアは自分の死期がじわじわと近づいていることを感じていました。このまま自室の白い壁と窓の外だけを見つめながら死んでいくのは嫌だと生クレアは思いました。クリスとエリオットから聞く外の世界を、自分も見てみたいと感じました。
 生クレアは、外に出てみたいと願いました。いつもクリスとエリオットが外から摘んできてくれる花が、実際に咲いている所を見たいと思いました。しかし彼女の身体は弱く、ベットから立つことも苦労を伴います。
 外に出たいと願うけれど、それは叶わぬ望みなのだと生クレアはよく知っていました。やがて生クレアは、元気な身体で、外を駆け回る自分の姿を夢想するようになります。
 生クレアは、アルビノ?って言うの?身体の色が生まれつき薄い子でした。白い髪に赤い目の子でした。生クレアの家族はみんな、金髪に水色の目で、生クレアはどうして自分だけ家族と色が違うのだろうと、そのことを辛く感じていました。だから、外を駆け回る幻の自分の姿は、家族と同じ金髪に水色の目でした。
 で。
 生クレアの魔道の才能が上手い具合になんかこうこうなって(オイ)、無意識のうちに創成魔道が生じて、生クレアは自分の分身であるひとりの女の子を造りだしたのです。
 それがクレア=ファントムでした。

 生まれたばかりのクレアは、とても不安定な存在でした。幻みたいに実体がなくて、出たり消えたりしていました。エリオットやクリスが部屋に来ているときは、クレアは消えて、生クレアが部屋に一人きりの時は現れました。
 クレアは生クレアと、記憶や感覚を共有していました。クレアが外へ出て、色んなものを見たり聞いたりすると、それが部屋にいる生クレアにも伝わりました。生クレアはクレアを通して外の世界を知ったのです。
 生クレアはとても興奮しました。外の世界は、想像よりもずっと広く、ずっと素晴らしいものでした。エリオットやクリスが摘んできてくれた花よりも、野に咲く花の方がきれいだったし、エリオットやクリスが話してくれるより、ずっとずっとたくさんのものが外の世界にはありました。
 エリオットやクリスは混乱しました。ずっと部屋にいるはずの生クレアが、家の外のことをあれこれ話すので、何かおかしいと思ったのです。生クレアは、エリオットやクリスにクレアのことを説明しましたが、2人は理解してくれませんでした。エリオットもクリスも、生クレアは気がおかしくなったのではないかと疑うようになりました。生クレアは、2人にクレアやクレアを通して知ったことは話さないようにすることにしました。
 やがて、生クレアは、エリオットやクリスと距離を置いて、クレアとの時間を大切にするようになりました。生クレアはクレアを大好きだったし、クレアも生クレアが大好きでした。2人は言葉を話さなくてもわかり合い、想い合っていました。
 生クレアは最初、クレアが自分の分身で身体の一部のような感じに思っていました。でもふわふわとした幽霊みたいなクレアは、だんだん実体をもって、しっかりした存在になってきたのです。そうなるにつれて、生クレアは、クレアとの感覚が共有されなくなり、クレアが独自の考えを持つようになりつつあることを感じました。クレアは無邪気に生クレアを慕い、生クレアのために生きていましたが、生クレアはだんだん、クレアは自分とは独立した存在なのだと思うようになりました。
 生クレアは、クレアを自分の分身ではなく、自分が造りだした命なのだと思うようになりました。そう思うと、生クレアはクレアのことが不憫になりました。こんな風に、部屋の中にいるしかない自分につきあって、ここに縛られていることは、クレアにとってよいことではないのかも知れないと思ったのです。同時に、生クレアは、だんだん自分に死が近づいてくると感じていました。自分が死んだ後、クレアはどうなるのか、消えてしまうのか、それともひとりで残るのだろうか。生クレアは、クレアに消えて欲しくないと思いました。自分が死んでも、クレアに生きて、自分の見られなかったものを見、聞けなかったものを聞き、知れなかったことを知って欲しいと思いました。

 今まであんまり年代の話をしてこなかったのですが、この生クレアのお話は、だてでんが始まる何十年か前の話です。この頃魔界は、古い5種族たち、特に青剣の民と赤蜘蛛の民が争う戦乱の世でした。あんまり深く考えないんですが、まあその、戦乱は少しずつ収まりつつあるって感じでした。
 生クレアたちの住む村は比較的平和だったのですが、ある日、戦乱に巻き込まれ、焼かれてしまいます。

 生クレアの家が炎に包まれたとき、彼女の部屋の扉はゆがんで開かなくなってしまいました。両親は扉が開かないことを知って、扉を破り病弱で歩くのもままならない生クレアを助け出して連れて行くのは無理だろうと判断しました。生クレアは見捨てられたのです。クリスは姉がまだ部屋にいる、助けなくてはと両親に抗議しましたが、受け入れられませんでした。クリスは泣きながら両親に連れられて、脱出したのです。
 生クレアは、ベッドの中で、炎が迫るのを見ながら、それでも心穏やかでした。自分はこのまま生きていても、病気で外に出られないし、生きられる時間もそんなに長くないだろう。日頃から死が迫るのを感じていた生クレアは、もうあきらめがついていたのです。
 クリスが自分を呼ぶ声が遠くなるのを聞きながら、生クレアはクレアを呼びました。そしてクレアに、「自分の分も生きて欲しい」と頼んで、脱出するように言ったのです。

 生クレアは、火事の中で亡くなりました。
 クレアは大好きだった自分の造り主をうしなってしまったのです。
 クレアが炎嫌いなのは、彼女のマスターが火事で亡くなったからなんですよ、とか言ってみる。


 まあこんな感じでクレアは生まれて、彼女の造り主は死にました。
 生クレアは、エリオットとクリスに気が変になったのではと疑われてから、クレアの話を周りの人にしないようしようとしました。生クレアがそのように判断したことは、まあ当然なんですが、このことがクレア自身に大きく影響を与えました。
 つまり、クレアは、自分の出生を、人に言えない存在、になってしまったのです。生クレアとクレアは記憶と感覚を共有していました。生クレアがクレアを周りに対して隠そうとしたことで、クレアは自分自身が生クレアによって造られた存在だということを隠しながら生きることに運命づけられてしまったのです。
 なんていうか、自分にとってちょっとコンプレックスなこと、というのは、周りから貶されたり攻撃されたりしないだろうという状況でも、自分からわざわざ言わないことってあるじゃないですか。(自分にとって「すごく」コンプレックスなことは、やたらと主張したりするものですが) 生クレアはクレアのこと好きだったし、大切だと思っていたけれど、他の人に言うのはなんとなくコンプレックスで、はばかられる感じだったのです。だからそれを引き継いで、クレアは自分の出生については、自分からわざわざ言わないし、聞かれたとしてもはぐらかしたりする子になってしまったのです。

 で、生クレアが死んで、クレアは一人きりになってしまいました。上記のようなコンプレックスによりクレアは、生クレアの両親や、妹のクリス、幼なじみのエリオットに、「自分はクレアが造りだした存在なんだ」と言い出すことが出来ませんでした。
 クレアは「自分の分も生きて欲しい」という生クレアの遺言通り、生きようと思いました。世界中を見て回り、色んなものを知ろうと思いました。焼けた村を後にして、クレアはあてもない旅に出ました。

 その後、クリスは姉を見捨てた両親をものすごく恨みました。クリスはふさぎがちになりました。幼なじみのエリオットは、生クレアに恋をしていて、彼女を喪ったことをとても悲しみました。でも、両親を恨んでふさぎがちなクリスが不憫で、またクリスの自分への気持ちを知っていたので、クリスを支えて生きようと決めるのです。で、クリスとエリオットはそのうち結婚します。
 まあこっからは余談かなーって思うんですが、クリスとエリオットの間には、男の子と女の子が生まれます。男の子の名はテリアで、女の子の名はクレアって言うんです。幼なじみ3人で、1人死んで、残りの2人がくっついたら生まれた子には死んだ人の名前をつけるのがロマンってものです。(待て) だからだてでんには計3人のクレアがいるんですよ。ややこしくてスイマセン。でもこの3人目の、小クレアは別に物語の筋とは関係ないところで普通にすくすく育つので忘れて下さって結構です。

 うらっちからメルフォ頂きました。ありがとう。
>クレアん切ないです(´・ω・`)火事のときクレアんは生クレアを助けられなかったのかな(´・ω・`)切ないです。
 クレアん切ないよね。(オイ)
 クレアにそうして欲しいと言えば、生クレアは家から脱出して、火事から逃れられたと思います。でも、生クレアは、自分が病気でそんなに先が長くないだろうということをよく分かっていました。そして、自分が造り出してしまったクレアという存在が、自分によって縛られているということも感じていました。それと、ついに両親に見捨てられたんだなーという気持ちもあって、「今ここを生き延びてその内病気で死ぬのと、今ここで焼け死ぬのはそんなに変わらない」「むしろここで死んだ方がいいのかもしれない」って思ったのです。
 クレアは、だんだんと生クレアから独立しつつありましたが、それでも完全に生クレアから独立していたわけではなくて、生クレアの判断とか気持ちを共有する(大きく影響される)存在でした。
 この辺がエリさんとファーストとかと違うなあって感じるんですが、エリさんはあくまでファーストたちを駒として造ったわけで、自分の指示には従うけれど独自に判断し行動する駒というのを目指していたわけです。でも生クレアはただ外に出てみたいという気持ちから、自分の分身としてクレアが自然に生じてしまったという感じなので、エリさんとファーストとの関係とは全然違うわけなのです。(ファーストはエリさんに命の危険にある時は、エリさんが「私を殺しなさい(見捨てなさい)」と命令しない以外は、エリさんを命がけで助けます)
 まあそういうわけなので、生クレアが「ここで死ぬ方がいいかもしれない」って思ってしまったから、クレアはもう生クレアを助けようとかそういうことは一切考えなかった、ということです。ただ生クレアの願い「自分の分も生きて欲しい」を実行するだけ、だった、わけです。
 という感じでよろしいでしょうか?(オイ)

 まあクレアが生クレア助け出して、2人で逃避行or家族に晴れてクレアを紹介ってのもアリっちゃアリかも知れませんがww ああ、そっちの方がクレア幸せだなあ……。かわいそうにクレア(ノД`)

Back
-TOP(フレーム復帰)
-月面研究所