白井ゆうた(しらいゆうた)
「私が私でなくなったら、この気持ちは消えてしまう」

?才 ♂ 2月1日生まれ A型
   魔力:★★★★★
魔力容量:■■■■■
魔道技術:▲▲▲▲▲

好き:読書
嫌い:読書を邪魔するもの
得意:(割と何でも得意)

ゆうたとユラ(SS)
 本から目を上げて、彼女を見つめる。特に用はないと、そう断った彼女は、こちらが読書を中断したことを申し訳ないと感じたようだ。少し、困ったような表情をしている。
 ああ、自分は、このひとに恋人がいないことを知っている。ついこの間、彼女が長年の想いにケリをつけるのを、図らずも後援したばかりで。愛しても悲しむ人間がいないことを、頭の中で素早く確認する自分に、苦笑する。このひとは、綺麗だ。
 どうも、正面から見つめられ、笑われたのが気になったらしい。何故笑うのかと頬をつねられた。彼女の指が自分の頬に触れるのが、ただ嬉しい。何と小さな歓びだろう。恋とはこういうものだ、知っていた。
 以前愛しいと想った人には、触れることが許されなかった。あの笑顔は確かに自分だけのものだったのに、手に入れらない苦しみが、身体を衝いて引き裂かれそうだった。別れ話を持ちかけた時、涙を流した彼女は、今は別の男のために笑っているのだろう。長年の想いにケリがついたのは、自分も、同様だった。
 頬をつねられた状態から、何も言わない私に、彼女は多少憤慨したようだ。膨らせた頬までも可愛いと感じてしまうのは、相当重傷だ。
 後戻りは、出来ないのかもしれない。このひとの笑顔も泣き顔も、全て欲しいと、そう思う。自分が涙を流した時、何も言わずそばにいてくれた、このひとのやさしさを、全て欲しいと思う。けれど未来を奪ってしまうことが、怖い。
 それで言えないでいる、臆病な自分。愛しい人を泣かせることしか出来なかったあの頃、それよりずっと大人になったと信じていたのに。
 すまない、と、口に出して謝った。あまりに単純な謝罪に、彼女は少し戸惑った。確かに、反応を返さないことの代償としては、その言葉は率直すぎる。けれど真意は別のところで。今は、臆病から伝えられない自分を、ただすまないと、謝るしかなかった。

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